ロサンゼルス エンゼルスの球団売却が決まり、長年にわたって続いてきた球団の歴史が大きな転換点を迎えることになりました。
今回エンゼルスを傘下に収めるのは、実業家スタン・クロエンケ(Stan Kroenke)氏率いるKroenke Sports & Entertainment(KSE)。
この名前を聞いて、「あれ?」と思ったスポーツファンも多いかもしれません。
そう、クロエンケ氏はMLBだけではありません。
NFLではロサンゼルス・ラムズ、NBAではデンバー・ナゲッツ、NHLではコロラド・アバランチを所有。
さらにMLSのコロラド・ラピッズ、NLLのコロラド・マンモス、そしてイングランド・プレミアリーグの名門アーセナルもクロエンケ家のスポーツ帝国に含まれています。
まさに「世界をまたにかけるスポーツオーナー」です。
すごいのは「所有している」だけではないんです。
クロエンケ氏の名前が今回のエンゼルス買収で大きな注目を集める理由は、単純にたくさんのチームを持っているからではありません。
実際に、所有するチームを次々と頂点へ導いているんです。
NFLのラムズは1999、2021年シーズン、スーパーボウルLVIを制覇。
NBAのナゲッツは2022-23シーズン、球団史上初のNBAチャンピオンに輝きました。
そしてNHLのアバランチも2000-01、2021-22シーズンにスタンレーカップを制覇。
NFL、NBA、NHLという異なる競技で、実際にチャンピオンチームを作り上げています。
ちなみにMLSのコロラド・ラピッズでもMLSカップ優勝、NLLのコロラド・マンモスもNLL優勝(しかも二回)しております。
そして忘れてはいけないのがイングランドのアーセナルです。
クロエンケ家は2007年にアーセナルの株式を取得し、その後オーナーシップを拡大。現在ではKSE傘下の世界的なビッグクラブとなっています。
アーセナルは長い歴史を持つ名門クラブですが、近年はプレミアリーグ優勝争いの常連へと復活。
「勝つためのスポーツ組織を作る」という意味では、クロエンケ家の手腕は非常に興味深いものがあります。
なぜコロラドにこれほどチームが集まっている?
ここで気になるのが、
「なぜクロエンケ家はコロラドにこれほど多くのスポーツチームを持っているのか?」
というところです。
実は、クロエンケ家とコロラドには長い縁があります。
スタン・クロエンケ氏はミズーリ州出身ですが、1980年代にコロラド州で不動産事業を展開し、スポーツビジネスにも進出。
1999年にはNBAのデンバー・ナゲッツ、NHLのコロラド・アバランチのオーナーシップに関わるようになり、その後、MLSのコロラド・ラピッズやNLLのコロラド・マンモスなどもKSEの傘下に入っていきました。
つまりコロラドは、クロエンケ家にとって単なる「チームを買った場所」ではありません。
スポーツ帝国の土台となった場所なのです。
デンバーを中心に、バスケットボール、アイスホッケー、サッカー、ラクロスと、さまざまなプロスポーツを展開。
そこからNFLのラムズをはじめ、アーセナルへと世界規模にその勢力を広げていきました。
そして今回、そこにMLBのエンゼルスが加わることになります。
「コロラドのスポーツ帝国」がロサンゼルスへ
ここが今回のエンゼルス売却で個人的に一番面白いところです。
これまでクロエンケ家は、デンバーを中心としたコロラドのスポーツ市場で強固な基盤を築いてきました。
そしてラムズを通じてロサンゼルスにも巨大なスポーツ拠点を持っています。
ラムズは2021年シーズンにスーパーボウルを制覇。
新スタジアムのSoFi Stadiumを本拠地とするラムズは、ロサンゼルスにおけるKSEの存在感を一気に高めました。
そこへ今回、MLBのエンゼルスが加わる。
ロサンゼルスという巨大市場で、NFLとMLBの両方を持つことになるわけです。
もちろん野球とアメリカンフットボールではチーム運営も全く違います。
しかし、ラムズで培ったロサンゼルス市場での経験や、ナゲッツ、アバランチなどで積み重ねてきたチーム作りのノウハウを、エンゼルスにどう生かすのか。
ここは非常に楽しみなところです。
エンゼルスに必要なのは「スター」だけではない
エンゼルスには、これまでにも数え切れないほどのスター選手がいました。
そして近年では、言うまでもなくマイク・トラウトと大谷翔平というMLB史上でも特別な存在が同じチームにいました。
それでも、エンゼルスはなかなか勝てなかった。
大谷がチームを去った現在も、エンゼルスが本当に必要としているのは、単発の大型補強だけではないでしょう。
必要なのは、
「継続的に勝てる組織」
です。
選手の獲得、育成、スカウティング、フロントオフィス、球団経営。
そうしたすべてを含めて、長期的に強いチームを作ることができるのか。
ラムズ、ナゲッツ、アバランチで成功してきたKSEが、今度はMLBでどんなチーム作りを見せるのか。
エンゼルスファンにとって、これは大きな期待材料になります。
そして、もう一度見たい「トラウトの10月」
そして、エンゼルスファンが何よりも願っているのは、やはりこれではないでしょうか。
マイク・トラウトがプレーオフで躍動する姿。
トラウトはMLBを代表するスーパースターです。
MVPを3度受賞し、数々の記録を打ち立ててきました。
しかし、そんな歴史的な選手のキャリアを振り返ったとき、どうしても寂しさが残ります。
ポストシーズンで戦った経験が、あまりにも少ない。
2014年にはエンゼルスが地区シリーズに進出しましたが、その後は長く10月の舞台から遠ざかることになりました。
大谷翔平とトラウト。
MLBを代表する2人のスーパースターが同じユニフォームを着ていたにもかかわらず、エンゼルスはプレーオフに戻ることができませんでした。
だからこそ――
もし新オーナーのもとでエンゼルスが本当に強いチームへ生まれ変わったら。
トラウトが再びエンゼルスのユニフォームを着て、プレーオフの舞台に立つ。
そして満員のスタジアムで、トラウトが10月の大事な試合でホームランを放つ。
そんな光景を、一度でいいから見てみたい。
これはエンゼルスファンだけでなく、MLBファンの多くが願っていることではないでしょうか。
次の「優勝」はエンゼルスになるのか?
ラムズ。
ナゲッツ。
アバランチ。
そしてアーセナル。
異なる国、異なる競技でスポーツチームを運営してきたクロエンケ家。
そのスポーツ帝国に、今度はMLBのエンゼルスが加わります。
もちろん、オーナーが変わったからといって、明日から強豪チームになるわけではありません。
MLBにはMLBならではの難しさがあります。
それでも、これまで「勝てる組織」を作ってきたオーナーがエンゼルスを手にすることには、大きな意味があります。
コロラドで築き上げたスポーツ帝国。
ロサンゼルスでスーパーボウルを制したラムズ。
そして世界的なサッカークラブ、アーセナル。
その次にクロエンケ家が目指すのは、MLBの頂点なのか。
そして、そのチームでマイク・トラウトがプレーオフを戦うことになるのか。
エンゼルスの新時代が、いよいよ始まります。