アメリカンフットボールの本場・NCAAで、“Tokyo Toe” の異名を持つキッカーが静かに、しかし確実に全米を驚かせている。
その名は 松澤寛政。
日本でサッカー選手だった青年が、アメフト経験ゼロから渡米し、ついには全米トップ選手の称号 CBS Sports All-American に名を連ねるまで——その道のりは、まさに映画そのものだ。
松澤選手がアメフトを始めたのは、驚くほど遅い。
高校ではサッカー一筋。しかし卒業後は大学受験に失敗し、進路に迷いながら東京で働く日々。
そんなある日、父親の勧めで訪れたアメリカで、たまたま NFL の試合を観戦することに。
轟く歓声、緊張感、そして最後のフィールドゴールで試合が決まる瞬間——。
「こんな世界があるのか。自分も挑戦してみたい。」
その衝撃が、松澤選手をアメリカンフットボールへと導いた。
日本にはキック専門の環境がほぼなくキッカーについて教えてくれる人も誰もいなかった。
そこで松澤選手はキック技術はすべて YouTube で学び、練習場所は近所の公園や空き地。アルバイトで資金を貯めながら毎日黙々と蹴り続けました。
ある程度の距離を蹴れるようになると、松澤選手は思い切った行動に出ます。
自分のキック動画を編集し、アメリカの大学に次々と送ったのだ。
返事はほとんどこなかったが、唯一、受け入れてくれた大学があった。
それが Hocking College(オハイオ州)。
アメフトの聖地アメリカで、ついに松澤の挑戦が始まりました。
渡米した当初、松澤選手は言葉も分からず、プレーの説明も聞き取れなかった。
だが、練習でも試合でも、彼の武器はただひとつ。
「まっすぐ蹴る」
サッカーで培った脚力、そして独学で身につけたフォームが徐々に評価され、
Hocking Collegeで経験を積むにつれて、より高いレベルへの道が開き始めました。
2023年、転機が訪れます。
University of Hawaiʻi at Mānoa(ハワイ大学) に編入。
ここで彼の才能が一気に花開きます。
2025年シーズン、彼はNCAAハイレベル(FBS)において、フィールドゴール成功数でリーグトップに立ち、複数の大会記録やチーム記録を更新。今季はフィールドゴールを無失敗(成功率100%)で量産し、複数の週次表彰や、「Lou Groza Award」(全米大学最優秀キッカー賞)の最終候補にも選出されています。
ゲームウィナーも複数決めるようになると“Tokyo Toe” の愛称で全米メディアで紹介されるほどに。
ハワイの太陽の下、松澤選手は名実ともにチームの勝利を支える存在になっていた。
その安定したパフォーマンスは全米の記者やアナリストの注目を集め、この度ついに松澤は CBS Sports All-American に選出されました。
CBS Sportsは毎年、アメリカ中の大学選手から“その年の最も優れた選手”をポジションごとに選ぶ権威あるメディア。
そこに日本人キッカーが名を刻みました。
アメフト経験ゼロ、独学、日本の公園から始まった挑戦が、ついに全米トッププレイヤー の称号へとつながった。
野球、バスケットボール等少しずつアメリカスポーツで活躍する日本人選手が増えてきている昨今、最も難しいとされていたアメリカンフットボールでのこの活躍はNFLという大舞台をも見えてきました。
今後も松澤選手の動向に注目していきましょう。
